伏見の「家守堂(やもりどう)」でクラフトビールと日本茶を提供されている森勇気(もり ゆうき)さん。大学時代にイギリスのパブ文化に魅了されたそうです。その後、新卒でヤッホーブルーイング(よなよなエールなどクラフトビールを作っている会社)に入社し、様々な部署を経験されました。
「作るところから売るところまでやりたい」と思い、現在の会社に移り家守堂に携わり始めたそうです。家守堂は京都の150年続くお茶屋さんを受け継ぎ、リノベーションを行いその場で醸造を行うブリューパブに。
社長の京都への想いから
Q:どうして伏見でお店をされているのでしょうか。
会社がブルワリー(ビールの醸造所)の事業をしていて、京都の会社と関わる中で社長が京都を気に入り、京都でお店を作りたいという思いから始まりました。その中でご縁があり高齢の方が1人でやられている「安本茶舗」を引き継ぎました。昔から愛されているお店を活かして、建物は築150年以上の魅力を残しつつリノベーションし、ブリューパブに。ビジネスはビールと日本茶を融合していくことを考えました。
※ブリューパブは小規模設備のビール工場と、 そこで醸造したビールを提供するパブレストランの総称。
ビアツーリズムで地元の伏見で活性化したい
Q:どのような思いでお店をされているのでしょうか。
まずは伏見にクラフトビールという文化を作り、地元の人たちに愛される店を目指しています。また伏見の外からも人が来てくださるようなお店にすることで地域に貢献したいと思っています。
大学時代に留学でイギリスのパブではビールが10種類以上あり、日本にはない多様性が感じられました。その文化を日本にも生み出すことができたら面白そうだと思い、お店で作ったハウスビールと、外から仕入れたゲストビールといった様々なビールを提供しています。ハウスビールはクラフトビールを伏見に根付かせるために定番のビールを設けず、新しいビールを作り続けることで、その時々のビールを楽しんでもらえるようにしています。
(店内のショーケースに入っているクラフトビール)
Q:ビールへのこだわりや特徴を教えていただけますか。
ビールは鮮度が大事で味や香りが劣化していくので、作ったその場で飲んでいただくと一番美味しい。そしてブリューパブはビールを直接作っているので、新鮮な最高の状態のビールを飲めることができます。他に中間業者を省いているのでクラフトビールとしては比較的安く提供できています。
「牛ごろし」など独特なビールの名前はプロレスの技から取っています。個人的には「デスティーノ」というビールがおすすめで、日本のホップを主役に香りを伝えるために作りました。
(お店の入り口近くに、お茶屋さんの要素が引き継がれています)
Q:お茶へのこだわりや特徴を教えていただけますか。
お茶屋さんは安本さんから引き継ぎました。お茶は宇治から仕入れたスモーキィな香りの京番茶が人気です。
宇治の茶師による本場のお茶を知りその味に感動し、お茶を使ったビールを作りたいと思いました。しかし、お茶とビールの良さを残したまま掛け合わせるのは難しく、試行錯誤してできたのが「茶かぶき」というビールです。ビールとの組み合わせはお茶の香りを出しつつ渋みを抑えるのが難しかったです。
お菓子やスイーツとの掛け合わせも試行錯誤中です。
Q:コロナで変わったことと変わらなかったことを教えてください。
一昨年の6月からお店がスタートしましたが、半年ほどして新型コロナウイルスにより4月に休業し経営が厳しくなりました。しかし、地元のお客さんは変わらず来てくださり支えていただいています。
コロナ禍での新しい試みとして、ウーバーイーツでテイクアウトの導入や近所の酒屋さんにお酒を卸したりしています。より近所の人とのつながりを深めるために、ユーチューブも始めたりしました。ECサイト導入により、東京など京都以外でも飲みたいという要望に応えられるようになりました。ECではビールの詰め合わせセットが人気です。
現在、家守堂のお酒は店舗やECサイト以外に京都のビアパブやビアバー、京都伊勢丹でも買えます。
-編集後記-
お話を聞く中で、日本酒で有名な伏見でクラフトビールを作られていることや、元々お茶屋さんだったことなど驚きと面白さを感じました。コロナが収束したら直接お店にお邪魔させていただきです。
執筆:市民ライター 本井玲渡
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