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【UTTOCOな人】宮本直嗣さん・素子さん_vol.35 2019

宮本ファーム / 米とやさいの食工房  宮本直嗣・宮本素子

昭和初期から伏見の向島で農家を営む宮本ファーム3代目の宮本直嗣さんと奥様の素子さん。先代から続く米づくりに加え、直嗣さんの代で野菜の栽培もスタートされました。素子さんも米粉の研究を重ねながら、食について力を入れておられます。「会いに行ける農家」を目指す宮本ファームのお二人に、これからの農業と地域コミュニティに対する思いについてお話を伺ってきました。



原点に戻ってお米の良さを知ってほしい。


Q. 建設業をやめてご実家の農業を継がれたということですが、どんなきっかけや思いがあったのですか。


 建築業を一通りやり終えて、ふと地元の農業や工業に目を向けたときに、農業の担い手がいないことや、耕作放棄地が増えていることから、向島の将来に危機感をおぼえました。地元を盛り上げるというか、両方盛り上げるために農業をやる意味はあるのではないかと思いました。もちろん、農業にも大変なことも多くあり、建築を続けていたらしんどい思いはしなくて済んだとは思いますが、やっぱり人生一度きりの中で挑戦もしたいです。やってみないとどうなるかは分からないので「だめやったらまた戻ればええやん」くらいの気持ちで就農しました。





Q. こただわりや力を入れていることは何ありますか。

 お米は現在、徐々に消費量が少なくなっている現状があります。そこで力を入れていることの1つがお米の需要を高めるためのファーストステップとして特別栽培米というものを始めたことです。化学肥料を使わず、有機肥料しか使いません。手間はかかりますが、自分が「おいしい」と思うものをつくることを大切にしています。品種にもこだわり、「にこまる」を作っています。

 また、お米の魅力を色んな形に変えながら発信していくことにも力を入れています。近年栄養が豊富と話題の古代米の一種である赤米がありますが、毎年赤米の稲刈り体験を行っています。赤米について「昔のお米はこうやったんやで」というのを知ってもらうとか、そもそも日本人は昔からお米を食べてきたので、もう一回原点に戻ってお米の良さを知ってほしいという気持ちがあります。また、毎年開催しているたんぼラグビー(田植え前の水を張った田んぼで泥だらけになって行うラグビー)も発信のうちの1つです。それを通じて、農業にももう少し関心をもってもらいたいと思っています。ほかには、妻のお菓子作りという特技を活かして最近は米粉もあつかっています。お米の需要拡大を目指して、ふだんの食生活に取り入れられるように工夫しています。

Q. 米粉は奥さんの素子さんがきっかけということですが、どのような思いでされているのですか。



 はじめから米粉に関心があったわけではなく、たまたま米粉のシフォンケーキを食べる機会がありました。そこで小麦粉とは違うおいしさに驚き、「うちでもたくさんお米を作っているのだから」という思いで米粉をつくってみました。市販の米粉を買ってきて試行錯誤したりネットで調べましたが、米粉は奥深く、もやもやしながら販売をしていた時期もありました。お客様から「表記されているレシピ通りに作ってもうまくいかない」という声をいただいて、「これはいけない」と思い、大山崎にある米粉教室に通い始めました。そこでは、ある種のカルチャーショックを受けましたね。こんなにも世の中に食べ物があふれているのに、小麦アレルギーで食べることに困っている人がたくさんいるということに。そして試しに自分でも小麦をとらない生活を続けてみました。もともとパンやケーキなどのお菓子が大好きでよく買っていたのですが、小麦一切なしのグルテンフリーの生活にしてみると今まで感じていた不調がなくなり、本当に驚きました。体質が変わったのではなく体質に合った食生活に変えたという事の効果です。これは私にとって大きな変化でした。より多くの方に安価な小麦だけでなく、米粉という選択肢を知っていただきたいですし、これからも学ぶ姿勢を大切にしていきたいです。



「もっとおいしいものを」と高みを目指し、少量多品種でお客さんの声に応える


Q. 先代からされていたお米だけでなく、野菜の収穫もされていますが、なぜ始められたのですか。


 土をいじっていたら米作りだけでは満足できずに野菜も作りたくなりました。はじめの頃はどの野菜がおいしいのか分からなかったので、自分で作ってみて「もっとおいしいものを」と試行錯誤を重ねていきました。農業は土台である土づくりからはじまりますが、微生物も有機物もたくさん含まれている多様性があって通気性もある土を目指しています。



Q. お米にも野菜にもこだわりが強い宮本ファームさんにはファンからの要望も多いと思うのですが、大変なことはありますか。 また、どのような工夫をされていますか。

 作業をする人員が少ないので大量生産はできないところが難点です。その代わり、周りの方の声を聞きながら求められている野菜を少量かつ多品種で栽培することができます。その野菜も特別栽培農産物という方法で育てています。農薬もできるだけ自然由来のものや微生物農薬を使ってみたり、肥料は有機肥料を使ってみたりと工夫しています。それらを使っていると、だんだん土が変わっていきます。野菜は少量ですが、みんなが「おいしい」と言って買ってくださっています。

農業はどこまでいっても、「食」のこと。

だからこそ農業を色んな側面から楽しく発信したい。


Q. たくさんの人の声を直に聞いておられることがよく伝わってきました。「会いに行ける農家」というコンセプトへの思いを聞かせてください。


 農家をはじめてから「人とこんなに交流できる仕事もあるのだ」と知りました。農家は忙しい人が多いので小学生の見学などは断るところが多いのですが、私は大歓迎です。むしろ1区画くらい場所を提供するのでそこで野菜づくりをするのもおもしろいと思っています。門戸を開くことで大学生や障がいを持っている方、米づくり体験をしたい方などが農園に来てくださいます。仕事である農業を1つのツールとして、直接人に会って、会話をして、自分も相手も笑顔になれるのがいいなと思っています。


Q. 宮本さんはコミュニケーションを取ることを大切にされていますが、どのような手ごたえを感じていますか。


 農家がどんな思いで作ったのか、どうやって料理に使うかなどを直接説明するのと、大手企業が販売するのとは異なると思います。商売の裏側には人とのコミュニケーションがあります。お客さんと色んな交流ができますし、どんどん人の輪が広がってきました。そして農業はどこまでいっても食のことなので、みんなの関心は高いです。だからこそ農業を色んな側面から楽しく発信していきたいと思っています。たんぼラグビーはその発信のうちの1つですし、地元の小学校との連携や稲刈り体験なども行っています。すべて人のつながりに支えられています。



たんぼラグビーをやらない理由が見つからない。


Q. 発信する場づくりをするときに大事にしていることはありますか。


 たんぼラグビーは、農業を身近に感じてもらうということも大事にしていますが、人と人とがコミュニケーションをとれる場所に田んぼがなればいいなと思い行っています。野菜一つにしても野菜を買いに来た人とコミュニケーションを図るというのが大事だと思っています。家族がコミュニケーショを図る、地元の学生と地域の人がコミュニケーションを図る、企業さんがコミュニケーションを図る。そのような場所でつながった人たちの中から「コミュニケーションは大事だ」という価値観を共有して、「フィールドを使ったコミュニケーションの場」として賛同してくれる人からたんぼラグビーを一緒に企画する人も探していました。現在は行政も巻き込んで開催をしています。






Q. コミュニケーションがキーワードのイベントなのですね。こだわりはありますか。


 ひとつは、行政からの補助金に関しても第二回までは一切使っていないということです。なぜかというと補助金を使うのは簡単ですが、はじめはやっぱりこの田んぼラグビーの趣旨を地元の企業などにしっかり伝えて、協賛金を頂きたいと思っていました。もちろん企業の方にもたんぼラグビーのメ

ンバーとして入っていただきました。地元の人と企業、病院関係者と学生、地元の小学校や中学校と、同志社大学のラグビー部が対決したりして、コミュニケーションが図れました。さまざまな立場の人たちがラグビーを通して対戦できるなんてこんなにおもしろいことはないと思います。

 もう一つは、たんぼラグビーはやっている人だけではなくて観ている人も楽しいということです。第二回目では、特別養護老人ホームのおじいちゃんやおばあちゃんがお手製のうちわでその老人ホームの職員チームを応援する光景が見れました。応援している人もみんな含めて「うれしい」「たのしい」。これに何の意味があるかが大事なのではなくて、こうしたコミュニケーションが大事なのだと思います。大きな理由がなくてもやります。こんなに良いことばかりなのだから、やらない理由が見つかりません。楽しいからやる、そうシンプルでいいと思います。


Q. たんぼラグビーの今後について教えてください。


 昔は向島といったらあまり良いイメージを持たれていなかったのですが、最近では向島といえば「たんぼラグビーのとこやろ」と返ってくるようになりました。それだけ多くの人に知ってもらえるくらい規模の大きなイベントになってきていることも事実です。どうやって継続していくかを今後、しっかりと考えていかないといけないと思っています。家族で来たいという声もあるので、新しい取り組みとして休耕中の田んぼでグランピングなども考えています。これからも変わらず「地域が元気になること」を考えてやっていきます。


Q. 農業の立場から地域に目を向け続けている宮本さんですが、今後への思いを聞かせてください。


 正直なところ、農業はしんどいことが多いです。子どもは女の子ばかりなので、「私の代で終わってしまうのだろうか」と思うこともあります。農業している方はやっぱり高齢者が多いですし、「耕作放棄地も開発されて企業が入ってくるのだろうか」と寂しくなるときもあります。気候変動の影響を受け、これから気候のリスクも増えていきます。だからこそ、基盤づくりや、やっていることを伝えることは親世代がしていく義務だと思います。コミュニティはそれを支えてくれると思いますし、何かあったときは人とのつながりがあれば、助け合うことができると思うので、これからも地域でのコミュニケーションに力を入れていきたいです。


宮本ファーム

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