たくさんの行事が活発に行われ、多くの住民のみなさんで賑わっている藤城学区。藤城学区の活動を中心となって進めておられるお二人に、インタビューを行った。
その中で、なぜ藤城学区は活発な学区活動が行われているのか、活動していく上でどんな事を大事にしているのかが見えてきた。
積極的な藤城学区はどこから生まれていったのか。
藤城小学校はとても開かれた学校であったことが、藤城学区を語る上では大きいという高橋さん。
元々は当時人口が増えていく時代に生徒数が急増し、学級数が増えていく中で、藤ノ森小学校の分校として藤城小学校が生まれた。
「今では笑い話だが、当時は生徒数が1800人近くにのぼり、運動場なのに危ないから走り回るなと注意されるほどだったと聞いている。」と松井さん。
昭和61年の藤城小学校開校後も生徒数は増加し、校舎の増築問題が発生していく。PTA役員に就いていた高橋さん松井さんのお二人も、教育後援会の建設委員会に参画していく。一から作り上げて行く過程に参加したお二人は、多くの会議や交渉に臨む中で、「楽しくてやりがいのある組織」を考え、「自分たちが作り上げている」という気持ちを強く持ち、熱心に取り組んだそう。
藤城は『まち』があったところに学校ができたのではなく、学校ができて街ができていったことで、学校のことを考えるという事は、地域を考えるという事に密接につながっている。
藤城には『小学校を地域文化の発信拠点に、学校を地域の人が集まるセンターのようにしよう』という考え方がある。一般的には地域の各組織はそれぞれで活動しがちだが、地域で取り組む「子育て」や「学校」という横串を通すことで、地域の課題に対して、地域全体として考える視点を持ち、団体の連携や地域の一人一人の力を結集して、活動を行っていく環境が生まれているのではないだろうか。
藤城学区はなぜ活発に活動できるのか!?
①PTA活動は地域活動の学び舎!
藤城学区の歩みの中では、PTA活動が大きな役割を果たしている。PTAを通して、地域の様々な人と知り合うことができ、つながることができる。そしてPTA役員経験者の多くが地域の団体に入り、学校と地域が連携していく土台になっている。
それだけでなく、PTAでしっかりと取り組んだ活動や、そこで学んだやり方が地域での各種団体へ持ち込まれていくことで、ノウハウが広まり、さらなる活動の発展へつながっている。
また「子どもたちにどんな事を教え、どんな環境を提供するのか」と考える事が、保護者として、地域での自分の姿を鑑みることにつながるそう。
「学校と家庭と地域が連携するとよく言うが、保護者は学校での顔、家庭での顔、地域での顔とすべて持っている。子どもの成長を考え、地域で見守ることを考える中で、地域の事を自分たちの事と捉えて頑張る心を養っていくことができる場がPTAだと思う。」とお二人は言う。
②知らせる、見せることでみんなに知ってもらう!
藤城学区では情報発信に非常に力を入れている。
「地域の様々な活動も何をやっているか分からないと参加しにくいし、役も引き受けづらい。でも役や活動が終わったら『楽しかった』という声も多い。各団体がやっている取組がわからない事が問題だった。」という気づきから、小学校をはじめ様々な団体のお知らせが一元的に載っている『藤城やまざくら通信』を発行し、毎月全戸配布している。
※藤城やまざくら通信のバックナンバーがこちらから見られます。
http://homepage3.nifty.com/fujishiro-fureai/yamazakura.html
また、地域の夏祭りや体育祭など様々な活動のやり方をマニュアル化し、誰が担当になっても取り組める環境を用意している。
また、地域の夏祭りや体育祭など様々な活動のやり方をマニュアル化し、誰が担当になっても取り組める環境を用意している。
学校ができる前から地域を見守る藤城のシンボル「やまざくら」の木
藤城小の校庭には学校名木百選にも選ばれ、地域の子ども達を見守ってきた地域のシンボル「やまざくらの木」があり、それをもとにジャンパーもやまざくら色に統一されている。
藤城小の入学式では、地域の来賓の方にも着用していただき、「このジャンパーを着ている人はみんなを見守ってくれる人」として紹介されるそう。お二人はインタビュー中もこのジャンパーを着用しておられ、学校の中を移動すると「高橋さん松井さんこんにちは!」と子どもの大きな声が聞こえてきた。
こうした地域の中や、地域の外への積極的な発信が参加や協力へつながっている。
③どんな活動でも気軽に参加できる「しかけ」をたくさん用意!
藤城小の中にある手づくりのかまど、「なかまどんランド」
藤城小の中庭には、子どもたちがキャンプに向けて飯盒炊さんの練習などを行う『かまど』がある。
地域の大人たちが集まり作ったものだ。業者に頼むのではなく、いろいろな所を視察し、どんなかまどを作るか話あった。
またネーミングも公募し、看板は一年生の子ども達の書いた字を複写し彫込み、建屋の竹にはやまざくらやコスモスを描き、みんなで色を塗った。建屋の柱などは地元の宮大工さんの協力を得た。
「何かやるときは常に力を募り、わいわいと下見をし、会議室だけではやらない。」と高橋さん。『ふれあい』と『楽しみ』を大事にし、楽しさを感じてもらうことでさらなる参加を促している。
松井さんが「子どもたちを地域で見守ることで知っている子どもには注意できるように、子どもが知っている高齢者が困っていたら声をかけてくれるような人に育ってほしい。」と言うように、参加や交流をベースに藤城学区では未来をイメージしている。
花びら一枚一枚にも参加の工夫があります。
様々な活動のキーワード「どうやってやろうか」
とても印象的だったのは「私たちはいろいろな話を持って帰ってきても、『やるかやらないか』という会議はしない。『どうやってやろうか?』という会議をします。」という高橋さんのお話。
小学校のことは、学校運営協議会を通じて地域で協力し、地域の事は地域でやれる人にお願いしてやるという発想があり、「自分たちの役割は調整役であり、ムードづくりであり、しかけづくりをすること」と言う言葉からも強い意識が感じられた。
写真:やまざくらNET21 http://yamazakuranet21.blogspot.jp/2012/03/eco_08.html
地域の足を目指して藤城ecoシャトルを走らせました。
またエコ学区のモデル地区としても注目されている藤城学区ではあるが、それらも「地域の事を地域でやる」という発想が根底にある。
元々公共交通の通っていない地区であり、住民のみなさんにとっては「バスを走らせることで地域の足を確保し、年をとっても住み続けられるように」という事が話し合われていた。
そんな中で京都市からエコ学区の説明を聞き、その取組として交通量を乗り合いバスで削減することで排気ガス、二酸化炭素を減らし、環境にやさしい暮らしを実現することを含めてバスを走らせる社会実験ができないのか、という発想で「藤城でやってみようじゃないか」と実際にコミュニティバスの社会実験へ漕ぎつけて行く。
「地域に問題はたくさんあるので、みんなでアンテナをはり、助成金や行政の説明でもこれはあれに使えないかな?と考えていくんです。」というところに『地域のことは地域で』という藤城学区が活発に活動を行っていく原点が感じられた。
最後に、今後のお二人はどういった活動を展開されていくのですか?という質問に、「藤城の地域づくりに必要な事はたくさんある。地域の一人一人の力を集めて、高齢者の居場所づくりなどにも取り組んでいきたい。」と語る姿に、役員の順番や世代などにとらわれず、地域で必要なことをしていこうという思いを感じた。
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