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執筆者の写真伏見いきいき市民活動センター

【UTTOCOな人】藤本明美さん_vol.29 2018


 深草に事務所のある、NPO法人京都子育てネットワークさん。子育て情報の発信や活動したいという思いを持つお母さんのサポートをされています。今回は、理事長の藤本さんにお話を伺ってきました!地域のなかで子どもを育てる、子育ての間だからこそ地域に関われる、そんな可能性について話していただきました。

活動の原点は自分の経験

Q:京都子育てネットワークが始まったきっかけを教えていただけますか。

 NPO法人京都子育てネットワークの立ち上げは、1997年です。私が1994年に子育てサークルを立ち上げたのも、私自身の子育てのときに、地域で知り合いがいないというところが始まりにあります。それまではずっと幼稚園で仕事をしていて、育児休暇に入り出産しました。出産後は、どこに行けば同じような年頃の子どもたちやお母さんに会うことができるのかわからず、孤立感がありました。

 仕事に復帰した際に、園に子どもを預けておられるお母さんたちに「幼稚園・保育園に入るまでどうされていたんですか?」と尋ねると、多くのお母さんが私と同じように孤立を感じているということ、もっと早く子育て中のお母さんたちに出会う環境がほしいという人たちが多くいらっしゃるという事がわかってきました。一方で、5〜6人程度のグループを作り、生活協同組合で共同購入をし、毎週グループで食材を分け合い、地域で楽しく子育てをしているという方たちもおられ、孤立を抱えながら子育てをしている人と近所のお母さんとつながれている人の2パターンに分かれていると感じていました。

 せっかくお子さんが生まれても、孤立感を持ちながら子育てをしなければならない状況があるということを知り、「なんとかならないのかな」と思いながら働いていました。

Q:少しお話にもでてきました、1994年に子育てサークルを立ち上げられたということですが、その活動はどのようにはじまり、広がっていったのでしょうか。

地域で「お母さんも子どももかしこまらずに、気軽に育ち合える場所」をつくりたいと思い、仕事を辞めて子育てサークルを作りました。当初は、手探りではじめ、口コミで母子40組以上が毎週狭い場所に集まってくださっていました。子どもを2人以上連れてくるお母さんもいて、100人程度になるときもありました。

 それが話題になり新聞に取り上げられるようになると、毎日のように電話がかかってくるようになると、どのお母さんたちも同じように困っているんだなと改めて実感しました。自分のサークルでは受け入れ人数にも限界があり、わたしたち以外にも同じようなサークルが京都のどこかにあるのではないか!?と思い、このようなお母さんたちや子供の居場所の情報を収集し、困っているお母さんの家の近くにも、このような場があることを発信していこうという思いからネットワーク活動をスタートしました。情報発信を常に行い、お母さんが様々な地域の居場所に行けるように、情報をお母さんに配信していくようなネットワークをつくりたいと思いました。

 お母さんのための居場所の情報を集めるにも、今のようにインターネットがなかったため、新聞の切り抜きなどを集めてその場を運営している方にネットワークについての思いを書いたお手紙を書いて送りました。それに共感してくださった方々が集まってくださいました。

(深草のふかふか家さんの2階で行われている子育てコミュニティベース)

Q:ご自身が妊娠されている時、特に印象に残っているエピソードなどはありますか。

 2人目を妊娠しているとき、つわりがひどかったため有給休暇を取っていました。その時に近所の方が声かけてくださり、子どもを連れて近所に遊びに行く機会がありました。0〜3歳までの子どもたちとお母さんたちが楽しそうにお昼ごはんを食べていました。お母さんたち同士が自然に悩みの相談やリフレッシュをしていて、子どもたちは、兄弟でなくても、お兄ちゃんお姉ちゃんとして振舞っていました。子どもが泣いていたら、自分の子どもでなくても他のお母さんがあやしてくれ、みんながみんなのお母さんのようでした。

 親と子の縦の関係だけでなく、ナナメの関係がたくさんでき、子ども同士の横のつながりもできました。たくさんの人に可愛がってもらいながら、社会的な経験をして育っていく様子に、豊かさと安心感が生まれたようなきがします。親も子もその空間で自然と育ち合っていることが目から鱗でした。

子どもは、家庭と教育現場で育つものだという勘違いをしていた自分に気が付き、地域の中で子育てすることのよさを感じました。

さまざまな状況のお母さんをサポート

Q:現在はどのようなことを展開されているのでしょうか。

 1つ目は子育て拠点づくりです。京都市からの委託事業として、地域の子育て拠点「つどいの広場」というものを行なっています。洛西地域では「まーぶりんぐ」、桂では「いっぽ」という名前です。深草ではふかふか家の2階で、週2回親子の居場所をこちらは自主事業として開催しています。

 2つ目に子育てグループを対象としたコンサルテーションを行なっています。京都市内全体で約180団体のグループがあります。さまざまなサークルにアドバイザーを派遣し、運営に困っている部分をサポートしたり、相談にのったりしています。また、活動を立ち上げたい人や何かやりたい人がやりたいことを実現していけるようにサポートしています。

 毎日電話相談を受けているのですが、電話ではまず、「こんなことしたい」、「イベントをしていても、参加者が来ない」、「地域とつながるにはどうしたらいい」などの相談を受け、現場にアドバイザーを派遣します。ママ講師バンクというものもあり、どのようなイベントを実施したらいいかわからない方には、ママ講師バンクの中から講師をコーディネートし、派遣しています。

 3つ目に親子の居場所情報の配信を行なっており、行政が配信していない情報を重点的に配信しています。地域で何かやりたいと思っている人たちは、需要がなければモチベーションも下がってしまいます。それは財産の損失と思っています。そこで、地域のために何かやりたいと思っているお母さんの思いや活動を他のお母さん(仲間)に届くように、情報配信として力をいれています。

 また、ネットでの配信だけでなく、「MomBoom(マイブーム)」という子育て冊子を発行しています。保健センターに協力していただき、多くのお母さんに冊子が届くようにしました。子育ては住人十色で提携通りにいかないことを子育ての「あるある」を掲載して伝えたり、つどいの広場やサークル、4回連続講座の子育てスクール(自主開催事業)など、お母さんたちが家にこもりきりにならないよう、さまざまなパターンで外に出ていく機会や場所があることを伝えています。

(京都子育てネットワークの目指す循環の形)

Q:今では地域には多くの居場所やサークルなど、子育て中のお母さんに向けた活動がありますが、他の活動はどのようにみられていますか。

 今行われている多くの子育て支援サービスは、「その場に行くと何かしてもらえる」「楽しませてもらえる」プログラムが用意されています。楽しかったと言って家に帰れる場所はたくさんありますよね。しかし、気がつくとお母さんたちが「やってもらえる」と受け身になってしまうようなものもあります。もちろん、楽しい時間を提供することは大切なことですが、子育てを通して社会・地域・人と繋がる体験を主体的に感じる場をつくることが大切だと考えています。

 子育てというフィルターを通すことで、いろいろなものが見え、新しい出会いがあり、自分を見つめ直すお母さんもいます。子育て中の今だからできることにチャレンジされるお母さんもいます。私たちはこれを「母力(ははりょく)」と呼んでいるのですが、母力を発揮できる体験をすることで、自分の子育てが終わってからも地域を元気にエンパワメントできるような人がたくさん広がっていきます。

 自分の子どもが成長してもそのお母さんが、自分の住む地域をずっとエンパワメントし続けるという循環がうまれるといいなと思っています。

※エンパワメント…自身の生活や環境をコントロールできるよう、もともともっている素晴らしい潜在力や可能性を引き出すこと 。

みんなで助け合うために

Q:子育てのなかで男性(お父さん)の役割も大きなものになっていると思います。活動されているなかで何か工夫されていることはありますか。

 お父さんにも来てもらいやすいよう、あえて「パパも」とつけるなど工夫しています。夏に近くのプールで水遊びをするのですが、夏の外遊びはパパの役割みたいになっているところもあります。

 深草でも、年に1回開催される深草100円商店街の際に、ふかふか家の2階で活動しているお母さんたちが手作り品を販売されたり、吹奏楽のグループをつくってオープニングで演奏されたりしました。その時は、お父さんが子守をしてくださり、お父さん同士のつながりができていました。お父さん同士がつながるのはおもしろいですね。私がサークルをやっていたときも、お母さんたちの仲がよく、その影響なのかお父さんのサークルができました。イベントのときには、劇やバンド演奏をしてくださいました。

(ママ講師のみなさんが大活躍のイベントの様子。お父さんの姿も。)

Q:今後の展望や挑戦について聞かせていただけますか。

 今までみなさんがされていたような子育てサークルなどの居場所の大切さを、改めて見直していきたいと思っています。サークルや居場所は目新しさもなく、説得力もありません。居場所はいっぱいあると片付けられてしまいがちですが、それが「地域のインフラとして大切」ということを追求していくことを一緒に考える仲間がもっとほしいです。

 子ども食堂や高齢者の居場所づくりは話題になっていますよね。居場所づくりは流行りに関わらず、地域に病院があるのと同じように当たり前にあってほしいです。友達がいない人が行く場所と思われるのではなく、当たり前に誰もが通る場所として認識してもらうような地域を考えていきたいです。「子育て支援が地域づくりにつながっていく」という大事な原点を見失わず私たちの活動を継続していくことが大切だと思っています。

 とはいえ、無理するのではなく、みんなで気持ちよく子どものために少しずつ何かすることが大切だと思います。みんなが少しずつ積み上げることで大きなものになるので、一人で頑張りすぎなくても大丈夫だと思っています。

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