top of page
執筆者の写真伏見いきいき市民活動センター

【UTTOCOな人】牧田 一穂さん Ichiho Makida_vol.21 2017


ふかふか家と牧田さんの始まり

Q: ふかふか家(や)とはどんな場所か簡単に紹介して頂けますか。

深草商店街と伏見区役所深草支所のまちづくり推進課が一緒になり、この商店街と深草地域の活性化のための拠点づくりとして始まりました。もともと空き家を改築し、居場所となるように考えていましたので、さまざまな団体が集まり、多目的に使えるよう、カフェをメインとした飲食ができる施設としてスタートしました。

 ふかふか家のカフェ部門を京都ふれあい工房が担当し、2階の子育てスペースは、京都子育てネットワークさんが運営を行い子育てママを対象にしたイベント等を行うスペースとして、高齢者に向けた取り組みは、深草中部地域包括支援センターや深草学区社会福祉協議会が実施するなど、多様に連携しながら、多目的に取り組みを行っています。

Q: 牧田さん自身が「ふかふか家」の事業に参加されたのは、どのようなきっかけからですか。

僕は京都ふれあい工房の職員として「ふかふか家」のカフェを担当しています。「京都ふれあい工房」は精神障害のある方の就労支援施設で、障害のある方が働く場であり、就職に向けてのステップアップの場です。取り組みのひとつとしてカフェを運営し、そこで働いていただくなかで、実践的な訓練をしています。しかし、深草地域には、精神障害のある方の支援をしている場所があまりありませんでした。ふかふか家で障害のある方が働けるカフェを運営することができれば、「障害のある方と地域の人とのつながりの場ができる」と思いスタートしました。

(ふかふか家の内観。ここからさまざまなつながりがうまれています。)

Q: ふかふか家でどのようなお仕事を、牧田さんは担当されていますか。

基本的には就労支援という形でかかわっています。もちろん、お客さまに出す食事を作り、提供している施設ですので、カフェとしての仕事もしています。洗い物ひとつにしても洗い方や食材の切り方、接客などをどのようにすれば上手くできるかを訓練に来ている障害のある方と一緒に考え、克服しながら働くという事が、僕らの仕事です。

地域の方や障害のある方…食でつなげる場としてのふかふか家

Q: ふかふか家で「食」を提供するのはなぜでしょうか。

食べるところであれば、地域の方が休憩もしやすいと思います。カフェの中に無料休憩所もあるのですが、無料だと地域の方は意外と使いにくいようで、利用する人はほとんどいないんです。「休憩するくらいなら、ここでお茶飲んだり食べたりしよう」と思う人が多く、「実際『食』は居場所には必要なのかな」と働きながら思っています。     

 コーヒーチェーン店に若い方がつい居てしまうことに、似ていますね。

Q: 知らない人同士でも「つながる」場を、どのように作っているのでしょうか。

意図的につくっているつもりはあまりありません。例えば、お客さんど同士で話すということがよく起きます。というのも、ふかふか家の常連さんは、スタッフにも気軽に話しかけてくださるので、お喋りしやすい関係ができています。さらに、スタッフと常連さんとの話を聞いて、興味があることに他のお客さんも入ってこられたりします。

 また、自分からは声をかけづらい方でも興味がありそうな雰囲気であれば、その方に話を振ってみます。しばらく三人くらいで話して、話が弾んだところで私はカフェの仕事に戻ります。

 最初のころからそんな感じでしていたら、だんだんここでの顔のつながりが出来てきました。二人が繋がり、知り合い同士がいて、話が広がることもあります。

>どんどん連鎖して、人と人が繋がっていくのですね。

そうですね。

 また、カフェ以外に、誰でも参加できるような催し物を開催しています。催し物の開催は、僕達が主催することもありますが、常連さんがここで教室をしてくれることもあります。例えば、ちぎり絵教室というのを月2回ほど常連さんが開いています。その講座に地域の高齢者が参加してくれます。ちぎり絵教室に来た方が「私は別でこういうのをやっているよ」と伝えてくださり、別の催しにつながる流れもありました。 

 催し物をきっかけに、普段からふかふか家に寄ってくれるようになることもあります。

(お店の中には、’’まちの掲示板’’としてたくさんのチラシがあります)

Q: お客さんは障害のある方の就労支援の場とは意識せず、自然に来られるのですか?

 そうでうすね。障害のある方が働いていることは、敢えて表に出してないのもありますが、別にそれを表に出す必要もないと思っています。普通にふかふか家に来てもらい、後から障害のある方が働いていると知ってもらう方が、変に壁をつくらずに接することができるかなとも思っています。

Q: 利用者(働いている障害のある方)にとって、ふかふか家はどんな場所でしょう。

一緒に働いている障害のある方々としては、やっぱり普段の生活の中で地域の人と関わる機会は少なかったのではないかと思います。なので、ふかふか家のような場で働くことで、障害のある方々も、お客さまなど地域の方と話す機会を得る場になっていると思います。

 お客さまはここで障害のある方の就労支援をしているということを知らずに来られる方が大半です。そのため、地域の方はお客さまとしてふかふか家に来られます。障害のある方が熱心に働いている様子を見て、「頑張っているんやね。」と声をかけていただいたり、商店街の中で声をかけていただいたりします。そうすることで、生活の中に広がりができているように感じてます。

 人とのコミュニケーションの取り方にも、この場が役立っていると思います。地域の方からすれば、精神障害のある方について知る機会はあまりありません。メディアの取り上げ方などで、精神障害とは「怖い」というイメージがある方もいるかもしれません。僕の一つの役割としてあるのは、そういうイメージをなくしていくことだと思っています。ここで訓練をされている方々は、すごく繊細で、気遣いができて、いろいろな周りのことが気になるからこそ、しんどくなる事があるのです。こういうことを知り、理解してもらえることもふかふか家の一つの役割なのかなと思います。

精神障害のある方の就労支援としての場 ふかふか家

Q: 働いていて、やりがいを感じるときはいつですか?

 やはり、利用者さんのできることが増えていると分かったとき、成長を感じられるときは、楽しいと思います。「〇〇ができるようになっていますね」と話して本人も喜んでいるときが一番嬉しいですね。就労を目指している方で、実際に就職できると本当に嬉しいです。

Q: 「利用者の方ができること」が増えるというのは、例えばどんなことでしょうか?

 小さいことから大きいことまで、いろいろです。

 本当に細かいことで言うと、日替わりランチの盛り付けが最初は時間がかかり、上手くきれいに盛り付けられなかったけれど、日を追うごとに上手に盛り付けられるようになり、スピードも速くなってきます。

 慣れてくると調理の流れも分かり、優先順位をつけられるようになります。最初は優先順位をつけるのが苦手な方も、洗い物で何を先に洗うと次の注文時にすぐ使えるかなどをお伝えし、実践していく中で優先順位をつける力が備わってきます。どこの場所でも、順番を決めて仕事をすることは必要なことだと思います。

(調理だけでなく、小物づくりなども行い、それぞれの得意を活かせる場に)

Q: たくさんの行程を、ひとつひとつ何回も反復する。全体の流れにたどり着くまで大変だな、と思います。根気強く、利用者の方と一緒にするという感じでしょうか。

 そうですね、誰でもそうかもしれませんが、すぐに一回でできるようになることは中々難しいことです。

 例えば、盛り付けも何回伝えても中々できるようにならない時は、どうしたら、盛り付けが綺麗にできるかを話したり、こちらで考えたりします。口頭だけでは分かりにくいため、絵や写真で盛り付け図をつくり、「こんな風に盛り付けますよ」と説明します。そのような工夫をすれば、だんだんできるようになります。

 「どういう風にしたら伝わるか」「どういう風にしたらできてくるのか」を本人との話や作業を一緒にする中で見つけていくことも、やりがいです。方法がはまり、できるようになるとこのやり方で良かったのかと思います。

 何回も同じことする訳でなくて、いろいろ試すという感じですね。本人たちも正解は分かりません。どうしたらできるようになるかということですね。

Q: これから、ふかふか家をどうしていきたいと思いますか?牧田さんが今後したいことは何ですか?

 ふかふか家に人が来続けてくれるように居心地のいい環境づくりをしていきたいです。引き続き、「利用者さんと地域の方が繋がるきっかけをつくっていきたい」と思っています。カフェの中だけでなくて、一緒に商店街の夏祭りの手伝いに行かせてもらい、利用者さんがこんな人だと知ってもらい、外でも声を掛けてもらえるようになっています。

 ここの場としてもそうですし、僕がこれからやっていけたらいいなと思うのは、この地域と利用者さん、お客さんなど人を繋げるようなことをやっていきたいなと思いますね。

学生ライター 中川友希

閲覧数:146回0件のコメント
bottom of page