米川 安寿(よねかわ あんじゅ)さん
美味しいはちみつを食べて自然保護に貢献する。生産者、消費者のどちらにとっても「おいしい」ビジネス。はちみつを通した自然保護に奮闘する米川安寿さん(29)にお話を伺った。
ハニールネッサンス
米川さんは現在、同志社大学大学院の博士課程に在籍している。2011年に立ち上げたのが「ハニールネッサンス」。ネパールを中心とした各国のはちみつを販売するネットショップだ。
現地へ足を運び、仕入れるはちみつを決める。販売を通して生産地との関わりを深め、はちみつの生産に欠かせない花と緑の豊かな環境保全に繋げている。
「ハニールネッサンス」ができるまで
ネパール人の父親、日本人の母親を持つ米川さん。父親の仕事の都合で幼少期に海外での生活を経験し、地球の自然を身近に感じてきたため、環境保全に関わりたいという想いが自然と芽生えた。
政策学部に進学した米川さんはグローバル経済を学ぶうちに、「私たちの生活は途上国の豊かな自然に支えられている」と実感。
ネパール、カンボジアなど貧しいと言われている国々へ足を運び、「支援すべき哀れな国」と言われていることに違和感を覚えた。
途上国の良いところを伝えたいと考えるようになった。
自分にできることは何かと思案していた米川さん。たまたま訪れていたネパールではちみつを口にした瞬間、そのおいしさに「これはすごい!」と思った。
はちみつは豊かな自然がなければ生産できない。ネパールでは急激な人口増加によって開発が進み、森林の減少が問題になっている。
また、ハニールネッサンスの目玉商品である「チウリ」の樹も激減している。
はちみつの販売を促進すれば、生産地の人々が自然の必要性に気づき、植樹などの保全活動が進むのではないか。
そこでネパールのはちみつ専門店に通い詰め、はちみつを生産するチェパン民族を紹介してもらった。
民族の生活に根差すはちみつの生産
チェパン民族の一人の男性が2008年に養蜂事業を始めた。彼は銀行からお金を借りて巣箱を購入し、村人たちに貸し出す。
巣箱は一箱約1万5千円(民族の人々の年収半分程度に相当する)だが、多くの人々が販売収益によって一年以内に巣箱代を返済する。
コーヒープランテーションのように、途上国の農業では質の高い生産物は販売に充てられ、生産者が消費できないことが多い。
しかし、ネパールでは元々、日常的にはちみつを食しており、生産したはちみつは生産者自身も楽しめる。儲けるだけではなく、儲けで民族の生活を守ることを大事にしている。
届いた熱意
米川さんは年に2度、はちみつの生産地を訪れる。車一台がかろうじて通れるほどの狭く険しい山道を進む。
過去に一度、バスごと転落しかけた。命を失いかねない危険な旅路。それでも米川さんは意を決して現地へ足を運ぶ。
米川さんは現地の人に植樹の重要性を説き続ける。しかし、自ら率先して植林を行うことはしない。
はちみつビジネスの維持発展のために、生産者が花と緑の保全を続けてくれる自然な仕組みを作りたかったからだ。
初めは過去に失敗したからと植樹を渋っていた住民たちだったが、取り組みを始めて3年目の今年、現地の住民から「4千本の植樹をした」と初めて連絡があった。
ついに米川さんの熱心な姿が現地の人々の心を動かした。
「はちみつ=自然保全」を広めたい
はちみつは現時点では主にネットショップで購入が可能だが、今後は販路を拡大していきたいと考える。
また、「はちみつの食べ比べ」や「はちみつを使ったハンドクリーム作り」などのイベントを不定期で開催し、はちみつによる自然保護の取り組みについて広めている。
「はちみつは必ず自然保護に繋がる」と語る米川さん。日々、頭の中ははちみつでいっぱいだ。
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